2017/07/18

レスキュー活動におけるビジネス的運営の成功2

前記事からの続きです。ここからがもっとNHK朝ドラ的なところです。

日本でもアニマルレフュージ関西(ARK)など、ビジネス的な視点で活動をしている団体はありますが、残念ながらまだまだ少数です。(ARKさんはdog actuallyでも記事にしていますので、これも再掲します。)SNSなどで保護活動に縁の薄い一般の人の書き込みなどには「犬を引き取ろうと思ったらお金を要求された!保護犬で金儲けしてる!」というようなものもチラホラ見受けられます。
↓の記事の本文にも書いていますが、こういう高いレベルでの活動が広まることで、一般の人の意識も変わっていきます。

保護活動をビジネスに例えて説明すると「ひどい!信じられない!」という声があがるのもたくさん見てきました。これは受け手の意識が低いというよりも、発信側の工夫が必要な点だと思います。イメージが悪くならないよう、わかりやすく伝えるというのは、ビジネスの広報では当たり前のことだからです。

そして、その後も他の場所でも何度も引用しているのが「保護団体の運営は、優しい美しい心だけではできないのです。」というシンディ・シャパイロ氏の言葉です。より多くの動物を救いたいなら何より大切なのは破綻しないこと。実際に活動に参加している人でなくても多くの人がこれを知っているだけで、無責任な賛美や、自己満足の丸投げの抑止力になるのではないかと思います。


(以下dog actually 2013年4月22日掲載記事より)
(photo by Elizabeth Thomsen)
前回、1975年にウォールストリートジャーナルで紹介された動物保護団体North Shore Animal League(以下NSAL) とその運営責任者アレクサンダー・ルーイット氏を紹介しました。
ジャーナル紙のその記事を読んで感銘を受けたのが、当時25歳の女性シンディ・シャパイロ氏。アイビーリーグの名門・ハーバード大学の経営大学院を卒業したばかりの、前途洋々たる人物でした。記事を読んだシャパイロ氏は「これこそが私がやりたいこと!このためにこそ今まで勉強してきたんだ!」と閃いたと言います。
シャパイロ氏は電話帳からルーイット氏の自宅の番号を調べて電話をするという大胆な行動に出ました。そしてルーイット氏が成し遂げたようなアニマルシェルター運営を、自分も同じように地元マサチューセッツで始めたいと、思いの丈を伝えたのです。
ルーイット氏は最初はまるで父親のようにシャパイロ氏を叱りつけました。最高の教育を受けて未来が開け始めたばかりだと言うのにもっと現実的になりなさい、と。動物保護というのはいったん関わり始めると一生を捧げる覚悟が必要だし、胸が張り裂けるようなことの連続だ。それにもちろんお金が儲かるものでもないのだよ、とも。
ルーイット氏は散々威したにも関わらず全く引く気配を見せないシャパイロ氏にとうとう根負けし、「そこまで言うなら」と彼女をロングアイランドの自宅に招待しました。
シャパイロ氏は週末をルーイット氏の自宅で過ごし、シェルターの見学にも訪れ、何がどのように運営されているのか、見聞きしたこと全てを書き留めました。シャパイロ氏の熱意を目の当たりにしたルーイット氏は、「実を言うと、自分がこうして動物保護のために作り上げたノウハウを継承してくれる人物がいればとずっと考えていた。君は私の眼鏡にかなった初めての人だよ」と打ち明け、最終テストとして10問の課題を出しました。課題は財政計画、マーケティング(市場調査~流通経路~広告を含む、計画から最終販売までの全過程)など、シャパイロ氏が実際に組織を運営する能力があるかどうかを見極めるものでした。
ルーイット氏が求めるシェルター運営のビジネス理論は、当時の既存のシェルターのあり方とは大きく異なるものでした。しかし幸いなことにシャパイロ氏は従来のシェルター運営のことは全く何も知らず、持っているのは財政やマーケティング、マーチャンダイジングに関する豊富な知識と溢れる熱意でした。与えられた課題を見事にクリアしたシャパイロ氏のもとに、ルーイット氏から5,000ドル(現在の日本円にすると300万円くらい)の小切手が送られて来たのは、それから間もなくのことでした。
シャパイロ氏はその資金を元手に、まず動物病院の地下室を間借りしました。広さにして約36坪強、ちょっとした一軒家くらいの床面積の、猫12匹犬25匹を預かることができる施設で、里親を探すリホーム活動を開始しました。当初は動物を計画通りに送り出せず、場所がいっぱいになれば自宅で犬達を預かることもありました。ダイニングテーブルの下には親のない子犬達が、リビングルームでは別の犬が出産して育児をしているというような状況を、ご主人と一緒に乗り切ってきたそうです。
この動物病院の地下室での保護活動を始めたのが1976年。現在もシャパイロ氏が責任者を務める保護団体Northeast Animal Shelter(以下NEAS)の始まりでした。
NEASは東海岸のニューイングランド地方(コネチカット、ニューハンプシャー、バーモント、マサチューセッツ、メイン、ロードアイランドの6州)の中で最大の私営NO KILLアニマルシェルターとして、大きな成功を収めています。現在は、活動当初の10倍以上の広さの屋内施設と屋外の複数のドッグラン、自前の医療施設、30名の常勤スタッフ、15名のアダプションカウンセラー、400名以上のボランティアを擁する団体です。利用者の便を考えて、施設は年中無休で朝10時から夜の8時までオープンしており、地理的にもアクセスの良い場所にあります。
(photo by Elizabeth Thomsen)

この成功は1975年にルーイット氏がウォールストリートジャーナル紙に語った、「どんな犬でも...そう、たとえハンディキャップを背負った犬であっても適切な層に適切なアピールを効果的に行うことで、家族を見つけてやることは可能です。資金調達に関しても同じことです。闇雲に活動するのではなく、この原則に従って戦略を立てて活動を続けること。これが成功の鍵です。」という言葉を、シャパイロ氏が忠実に実行し続けた成果です。
上に揚げた2つの画像は、どちらもNEASがリホームした犬達の同窓会イベントの様子です。こうして犬の里親になった家族とつながりを持ち続けることで寄付金も集まり易くなりますし、また次に動物を迎える時にもこのシェルターからという動機付けにもなります。
動物達による地元の老人ホームの訪問サービスも、NEASの大事なプログラムのひとつです。老人ホームに連れて行くのは、知らない人に撫でられても大人しく振る舞うことが出来る、注意深く選抜された動物達です。訪問される側のシニアの皆さんの喜びはもちろんのこと、このようなプログラムに参加できるというのは、新しい家族を見つける上での大きなセールスポイントになります。
また、子供達を対象にしたバースデープランも実施されています。レクリエーションルームを子供のバースデーパーティーのために1時間最低150ドルで貸し出すというものです(貸出料は団体への寄付金とみなされるので、もっと大きな額を寄付するのも大歓迎です。普通にレストランなどを借りるのと違って、この出費は税金控除の対象にすることができます)。飲み物や食べ物の持ち込みは自由、子供達は施設の見学ツアーに参加することができます。つまり資金調達と地元へのアピール、そして次世代への教育活動が同時に出来るというわけですね。
これら様々な戦略を立て、実行し、分析し、継続して来た結果、NEASは活動開始以来10万匹以上の動物をレスキューし新しい家族へと送り出して来ました。現在ではシャパイロ氏のところに、かつて彼女自身がやったように「私もあなたのような活動がしたいんです。勉強させて下さい。」という問い合わせが入って来ます。
「そうやって問い合わせて来る人々に、私はかつて自分がルーイット氏から言われた同じことを繰り返しています。NEASと同じ規模で成功を収めようと思ったら、経営学の学位か、実際のビジネスの経験が必要不可欠です。一般社会に通用する常識も身につけていなくてはなりませんし、マーケティングを実行する知識も必要です。通常のビジネスを開業するのと同様に、少なくとも最初の5年間は利益が出なくても持ちこたえられるだけの経済的基盤を準備しておくことも必要です。昼夜、週末、祝日を問わず働かなくてはならないし、胸がつぶれるように辛いことがあっても前に進み続けなくてはならない。時には、助けが必要な動物がいても背を向けなくてはならないこともある。保護団体の運営は、優しい美しい心だけではできないのです。」
幸いなことに、ルーイット氏やシャパイロ氏のような視点や考え方での保護団体の運営は、少しずつ浸透して広がり始めています。そして大切なことは、こうして高いレベルでの活動が広まることで、一般市民の意識も変わっていくということです。
NEASでは、犬や猫をリホームする際、295~395ドルのアダプション料金を設定しています。ここには、避妊去勢手術、州外や国外からの動物の運搬費用、ワクチンやマイクロチップの費用が含まれ、また次の活動への資金にもなっています。我が家の犬達をシェルターから引き取った時にも250ドルと275ドルのアダプション料金を支払いましたので、これはごく一般的な料金設定だと思います。公営のシェルターなどであれば料金はもっと低くなりますが、シェルターから動物を引き取るからといって、それが無料であると思っている人はアメリカにはまずいないでしょう。
日本で動物達のために活動している団体を拝見していると、どこも皆、資金の捻出に苦労していらっしゃる様子が見て取れます。何もかもアメリカ流を取り入れる必要もないし、無理な面も多々ありますが、それでもマーケティングやマーチャンダイジングの考え方をベースに戦略を立てるという視点が日本のレスキュー活動にも浸透し、一般の人々の意識も変わっていくといいなと思っています。
dog actuallyの読者の皆さんの大半はレスキュー活動にも理解があり認識の高い方々だと思うのですが、活動に携わっている方からは「動物を"引き取ってあげる"のにお金を払うんですか!?と言われた」などの残念な声もよく耳にします。浅く広く寄付金を募ることも容易ではないため、会費制を導入しているグループも多いようです。
アダプション料金を負担して動物を迎えることは、ペットショップの動物にローンを組むよりもずっと気持ちがいいものです。寄付金は何も数万円、数十万円単位でするものではなくて、最寄りの保護団体や保護をしている個人の方にペットシーツやフードを差し入れることでもいいのです。
アメリカの大きな保護団体が歩んできた軌跡を伝えることが、日本のレスキュー活動の少しでもお手伝いになれば幸いです。

<参考書籍>
『Little Boy Blue』 by Kim KAVIN

レスキュー活動におけるビジネス的運営の成功1

 この記事は、前回と前々回の記事で取り上げた「レスキュー活動におけるビジネス的視点」のシリーズになっています。

この記事のエピソードは旧SMILES@LAで紹介したことのあるキム・ケイヴィン氏著の『Little Boy Blue』に掲載されていたものに、当該保護団体のサイトに掲載されている情報などを加えてまとめたものです。一冊の本の中の一章だけのエピソードなのですが、これだけでNHKの朝ドラが一本できそうなくらいのドラマが詰まっています。なんでアメリカの話なのに朝ドラなのよって言われそうだけど、なんかすごく朝ドラのヒロインっぽい話なんですよ(笑)

旧SMILES@LAで紹介したのは、この本の前書き。マイケル・ヴィックのところから保護された犬たちのストーリーTHE LOST DOGSの著者ジム・ゴーラント氏が書いたものです。これもとても素敵なので、読んでいただけると嬉しいです。

(以下、dog actually 2013年4月8日掲載記事より)

犬のレスキュー活動において、マーケティングやマーチャンダイジングといったビジネス的な視点で戦略を立てて取り組んでいくことの大切さは、過去にも何度か書いたことがあります。
これは活動を破綻させることなく継続させ、より多くの犬の命を救い、犬にも人にも住み易い社会を作って行く上でとても大切なことなので、今回はPart2という形でまたご紹介したいと思います。(※再掲にあたって、タイトルを少し変更しました。元のタイトルは「レスキュー活動におけるビジネス的視点Part2」)

今から38年前の1975年、ウォールストリートジャーナルに、ある動物保護団体の記事が掲載されました。ウォールストリートジャーナルと言えば、経済や金融に関する記事を掲載している新聞です。動物保護の話題とはあまり縁がありそうにないジャーナル紙に取り上げられたのは、North Shore Animal League。記事の見出しは『正しい戦略を打ち出せば、3本足の猫にも市場有り。大企業を手本にした小さなアニマルシェルターの成功』というものでした。
North Shore Animal League(以下NSAL)は、世界でも屈指の大規模な動物保護の公益法人ですが、ジャーナル紙に記事が掲載された当時は、まだまだ小さな団体でした。1944年に設立されたNSALは、60年代の後半まで昔ながらの資金調達の方法、富裕層に寄付のお願いの手紙を送るという方法をとっていました。
さてジャーナル紙の記事の主人公であるアレクサンダー・ルーイット氏は、50年代に「アメリカのトップセールスマン12人」という書籍で、ホテルチェーンのヒルトン氏、コカコーラのファーリー氏などと並び称されたこともある人物です。訪問販売のルーイット掃除機は、戦後のアメリカの大ヒット商品でした。
1969年のある日、ルーイット氏は寄付金お願いの手紙を受け取った奥さんから「NSALに100ドル寄付したいのだけれど」と相談を受けました。現代の日本の感覚なら5~6万円というところでしょうか。
ルーイット氏は自分の寄付金がどんな風に使われるのか好奇心がわき上がり、NSALのシェルターを訪ねてみました。そこで会社を経営というもののプロであった彼の目に映ったのは、あまりにもお粗末な組織運営でした。シェルターが開いているのは平日のみ、しかも1日2時間だけ。フルタイムで働いている人間はたった1人。資金繰りに困窮して、電灯を点けておくことさえままならず。とにかく犬を保護するたびに赤字が増えていくという状態を何とかしなくてはと、ルーイット氏は決意したのでした。
彼はNSALの責任者にダイレクトメールキャンペーンを提案指導しました。地元の出版物印刷所に協力を依頼し、子犬と子猫の可愛らしい写真をあしらったDM28,000通を作成しました。DMの内容は「1ドルの寄付をお願いします。この子達の命を救う為に!たったの1ドルです!」そして、当時人気シンガーだったペリー・コモ氏もこの運動に参加しているという写真とサインを掲載する契約も取り付けました。
キャンペーンは大成功でした。集まった寄付金は11,000ドル。現在の価値に換算すると約67,000ドル相当になります。当時66歳でビジネスの世界からは退いていたルーイット氏は、NSALの責任者として組織の立て直しに取り組み始めました。ルーイット氏就任後の5年の間に職員は25人に増え、シェルターは年中無休に、宣伝広告費として毎年50,000ドルを計上するまでになりました。


(photo by spotreporting)
ルーイット氏は会社を経営するのと同じ手法でシェルターの運営にあたりました。
「シェルターに連れて来られる動物達は"仕入れ"です。新しい里親に送り出すことができれば"売り上げ"。仕入れたものが動かず"在庫"が多くなれば、商品のプロモーションを行って販売促進をする。多くのアニマルシェルターは高い志を持ってはいるものの、資金調達の方法もビジネス的組織運営も知らない人々によって運営されている。彼らが破綻せずに済んでいる唯一の理由は、毎年どこかのお金持ちの老婦人が遺産を残してくれるからです。」
ずいぶんと冷徹で辛口に聞こえるかもしれません。しかし資金繰りがままならず経営破綻してしまっては、しわ寄せが来るのは保護されている動物達です。
ルーイット氏が就任した年、NSALが家庭へと送り出した動物達は年間約2,000頭でした。現在のNSALは年間約60,000頭の動物が入っては出て行くNO KILLシェルターです。ルーイット氏は1988年に79歳でこの世を去るまで、NSALの運営に携わっていました。
ルーイット氏が亡き後も、NSALはビジネス的手法での組織運営を引き継ぎ、今では年間3,000万ドル以上の収支を計上する組織になっています。行き場のない動物達のレスキュー、リハビリ、リホーム、全国のシェルターや保護団体への支援、一般の人々への教育啓蒙活動といったNSALが果たしている役割は、40年以上前にルーイット氏がビジネス的手法で組織の運営立て直しを図らなければ、実現することがなかったものです。つまり大事なポイントは、大きな組織だからビジネス的運営が必要なのではなくて、ビジネス的運営を取り入れた結果、ここまでの大きな組織になったということです。
さて、1975年にルーイット氏のことが紹介されたウォールストリートジャーナルの記事を読んで、大きな感銘を受けた人物がいました。その人の名はシンディ・シャパイロ。ハーバードビジネススクールを卒業したばかりの、25歳のうら若き女性でした。
シャパイロ氏が取った行動は?それは次回にまた、じっくりとご紹介したいと思います。

<参考書籍>
『Little Boy Blue』 by Kim KAVIN

2017/07/11

レスキュー活動におけるビジネス的視点


タイトルに『ビジネス的視点』という言葉を初めて使った記事です。
「保護活動をビジネスだと考えてるなんて酷い!理解できない!」この言葉、このところSNSなどで本当によく目にします。
でもビジネス的に考えて、効率良く資金を調達し、効率良く保護犬を家庭に送り出すということの恩恵を一番受けるのは当の犬たちです。(猫でもうさぎでも同じ)私はこのポイントをずーっと説き続けていきたいと思っています。

また、この記事で紹介したシェルター医療プログラム(これは私が訳した言葉です)最近はいくつかの犬メディアで本家カリフォルニア大学デイビス校の日本人教授の方が『シェルターメディスン』という言葉で詳しく紹介する記事を書いていらっしゃいます。

(以下、dog actually 2011年11月7日掲載記事より)

前回は「犬種別レスキューという考え方」をご紹介しました。
これは"必要とされる所に適切な情報と供給を"という、ビジネスのマーケティング的な視点で立てられた戦術であるとお話しましたが、今回は動物のレスキュー活動におけるビジネス的視点についてもう少し詳しくご紹介しようと思います。
カリフォルニア大学デイビス校にはコレット・シェルター医療プログラムという独立財政のプログラムがあります。シェルターに収容されている動物達に適切な医療を提供するための活動や教育を行っており、寄付金によって運営されています。せっかく保護された動物が、ワクチン接種をしていなかったために伝染病に罹ったり、シェルターの医療体制が整っていないために助けられた命を落としてしまうことを撲滅していくことがこのプログラムの目的です。
この医療プログラムのディレクターでもあるケイト・ハーレイ獣医師は犬や猫の殺処分をなくすためにはビジネス界の戦術を取入れることが大切であると説き続けています。
ハーレイ獣医師がシェルターの戦略に「マーチャンダイジング」という言葉を使い始めた時「動物を物品扱いしている」と批判を多く受けました。
マーチャンダイジングとは、消費者の要求に適う商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミングで提供するための活動のことを指します。
商品を流通させる時に避けて通れない生産量と品質の管理。
この考え方もシェルターの動物達のために形を変えて取入れられています。
コレット・シェルター医療プログラムは、低所得者向けの安価な避妊去勢手術の提供や、野良猫のTNR活動(Trap - Neuter - Return 猫に避妊手術を施した後、元の場所に戻す。)を積極的に行い、シェルターに連れて来られる動物の数を減らすことに力を入れました。

(Photo by spotreporting

シェルターが過密状態であることは、衛生、医療の面で望ましい状態ではなく、それは里親希望の訪問者の減少という悪循環を招いてしまいます。
避妊手術の提供やTNR活動を通して注意深く動物の出生を管理することは、シェルターの動物達の環境改善(つまりは健康状態の改善)と、殺処分数を減少させる最も効果的で低コストな方法であると、ハーレイ獣医師は力説します。
これらはまず最初にサンフランシスコの動物虐待防止協会のシェルターを皮切りに始められ、殺処分数の減少に目覚ましい効果をあげました。
現在では他州でも多くの自治体で、生まれて来る動物の数を減らす戦略や、公営シェルターから私営シェルターや団体へ動物を移動させる「アダプション協定」が取入れられ、シェルターに収容された動物の90%以上の譲渡率を達成する自治体も多く現れています。



その他にも、多くの成功しているアニマルシェルターが取入れているビジネス的視点がいくつかあります。 

優れたカスタマーサービス

正確な知識、親切な応対、アニマルシェルターやNPO団体と言えども、これらはとても重要な事柄です。
感じの悪いシェルターには寄付金もボランティアも集まって来ないし、里親希望者も寄り付いてこないでしょうから。 

場所や営業時間の利便性

言うまでもないことですね。シェルターによっては午後3時くらいに閉まってしまうところもあります。
仕事をしている人でも気軽に立ち寄れる場所であることは大切なポイントです。 

積極的な宣伝活動

里親募集中の動物を効果的にアピールすること。優れたデザインのウェブサイトや、雑誌・テレビなどメディアへの露出。これらはとても重要です。 
ハーレイ獣医師は言います。
「生産量や品質の管理といった言葉を使うことは冷たく聞こえるかもしれません。
私達の社会はマーチャンダイジングという分野に多大な知恵とエネルギーを集結させて、優れたノウハウを確立してきました。動物達を救う為にそのノウハウを利用していくことは決して冷たいことではないはずです。
言葉の問題に捕われて、合理的に成果をあげるチャンスを失うことの方が、動物達にとっては悲しむべきことでしょう。」
とてもアメリカ的発想だなと思いますが、1頭でも多くの動物を救う為に知恵を絞り、心を砕く人々の努力は同じだと思います。
ビジネス的視点、悪くないと思いませんか?



犬種別レスキューという考え方

確かこの記事を書いたきっかけのひとつがSNSで偶然見かけた言葉でした。「犬種別レスキューというのがあると初めて聞いたけど、自分の好きな犬種だけしか助けたくないって感じがする。」という内容で、違うの!犬種別レスキューってそういうものじゃないの!って誤解を解きたかったんですね。

そしてメインの理由はこちら。「動物保護活動にビジネス的な視点を取り入れる大切さ」を訴えたかった。
これは今もずーっと言い続けていることで、文字にして発信したのはこの記事が初めてだったと思います。
今は日本でも発信するイメージにまで気を配り、資金調達も効率良い方法を取る保護団体が増えてきたけれど、この記事を書いた2011年はまだまだごく少数でした。
東日本大震災が起きた年だったから、日本の保護団体の多くはそんななりふり構っていられないという状態でもあったんですけれどね。でも、そんな時だからこそ、こういう考え方も紹介したいと思ったんですね。

「ビジネス的視点」の話は、何度か書いているのですが、このブログでは順番を変えてこの記事の後に続けてまとめようと思っています。

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(以下、dog actually 2011年10月24日掲載記事より)
(photo by paulicek0 )

一般的にシェルターやレスキュー団体から犬を引き取るというと「雑種犬しかいないのでは?」「私には特定の好きな犬種があるから無理。」というイメージが強いかもしれません。
しかしHSUS(米国動物保護協会)の調べによると、アメリカのシェルターにいる犬達のうち4頭に1頭は純血種であると言われています。
そしてそれら特定の純血種をメインに預かる犬種別のシェルターやレスキュー団体が数多く存在します。公営・私営を問わずシェルターの中には純血種の犬が入って来ると、当該犬種専門のレスキュー団体に連絡を取って一時預かりの家庭を探してもらうプログラムを設けているところも多く、犬種別のレスキューという考え方は深く浸透しています。
これは決して雑種よりも純血種の方が助ける価値があるからなどということではなく、犬のレスキュー活動にもビジネスにおけるマーケティングのような考え方を取入れることで、より効率良く多くの犬を助けられるようにという発想から来ています。
犬種別のレスキュー団体の多くは全国の同犬種の団体とのネットワークを構築しており、時には州を超えて一時預かりや里親探しに協力し合っています。これらのネットワークはアメリカンケネルクラブのParent Clubと呼ばれる犬種ごとのブリーダーのクラブがもとになっていることが多く、現在150以上の犬種のクラブが存在します。レスキュー活動や動物福祉の場面においてはあまり評判の芳しくないAKCですが、当初の犬種別レスキュー活動はAKC登録のブリーダー達がメインになって行っていました。

なぜ犬種別のレスキュー活動が効率が良いか?ジャックラッセルテリアのレスキュー団体ネットワークRussell Rescue Inc.(以下RRI)を例にとってご紹介いたしましょう。
(photo by nataaliaml )
dog actuallyでもおなじみ。「一筋縄ではいかない犬種」の代表、ジャックラッセルテリア

RRIでは全国の一般シェルターに、ジャックラッセルテリアまたはそのミックス犬が保護された際、ネットワーク本部への連絡を依頼しています。連絡があれば、該当する地域の一時預かりボランティアがシェルターから犬を引き取り、里親が見つかるまでの世話をすることになります。一般シェルターも、こうして犬が引き出されることでスペースに空きができて新しい犬を保護することができ、殺処分を回避することができます。
一時預かりの家庭や専門シェルターが見つからない場合もRRIのウェブサイトには地域別に「○○地域の××シェルターに3歳のオスのジャックラッセルが保護されています。」と言った情報が写真とともに公開されます。ボランティアの家庭などで一時預かりされている犬達の情報ももちろんサイトで見ることができます。
つまりジャックラッセルを家庭に迎えたいと思っている人はRRIのサイトを訪れると、どこにどんな犬が保護されているかを簡単にリサーチできるというわけです。
これは近所のシェルターに行ってみてジャックラッセルがいるかどうか探してみるよりもずっと効率がよく、犬達にとっても早く新しい家庭を見つけることができて一石二鳥。
さらに犬種別レスキュー団体の人達はその犬種と長年付き合い続けているので、リハビリやトレーニングをする際、どんなことに気をつけなくてはいけないか熟知しているというメリットもあります。
このdog actuallyの中でも史嶋桂さんがいつも書いていらっしゃるように、ジャックラッセルテリアのような初心者向けではない犬種というのは、特にこのような知識と経験豊富な人が仲介に入ることは重要です。
RRIのサイトでは「ジャックラッセルを家族に迎える前に」として「これでもか!」と言うくらいに注意事項の長いリストをあげています。(※注 このリスト、現在はRRIのサイトにもう掲載されていません。)
元々は猟犬であることから来る性質や行動、並外れた運動能力と体力・・・・ジャックラッセルは本当にあなたのライフスタイルに見合った犬ですか?と。
これは他の犬種でも同じで、ジャーマンシェパードやポインター、ボーダーコリーなど、「あなたは本当に彼らが必要とするものを与えることができますか?」と問いかけ、多くの場合家庭訪問をして犬を譲渡するかどうかを見極めます。
(面白いなと思うのは「犬があなたにふさわしいか」ではなくて「あなたが犬にふさわしいか」が問われるところですね。自分自身を振り返っても、ちょっと耳が痛いような気がします。)
このように、特定の犬種を求める人のために必要な情報を提供し、犬のためにも人のためにも相応しい縁組みを見つけやすくなるのが犬種別レスキューの一番のメリットです。
最初にも書きましたように、犬種別レスキューというのは決してその犬種以外の犬はどうでもいい、その犬種だけを助けたいという気持ちから作られているわけではありません。多くの団体はその犬種のミックス犬も対象にしており、時には全く別の犬種を預かることもよくあります。
一般シェルターでは、犬種レスキューに犬が引き取られて空きが出ることで、より多くの他の犬達を収容しておけるというメリットがあります。
「ニーズのあるところに必要な情報やものを」というビジネスマーケティングの基本に乗っ取った活動、そのうちのひとつが犬種別レスキューです。
ビジネス戦略の考え方をアニマルレスキューに応用するということ、犬種別レスキューの他にも色々あるのですが、これはまた機会を改めてご紹介したいと思います。

【参考サイト】

働く犬に思う、それ本当にその犬に向いている?

(photo by WerberFabrik ) 1ヶ月ほど前、CIA(Central Intelligence Agency=中央情報局)のブログに登場する犬たちが話題になりました。 CIAって、映画やドラマでスパイとかエージェントとかって出てくるあのCI...